こんにちは味噌人です。
今日は将棋雑記ということでNHK杯、棋王戦の感想など書いていきます。
対局内容については他に細かくやってらっしゃる方も多いと思うので、感想と小ネタ中心となりますので、ご容赦ください。
NHK杯について
NHK杯決勝は羽生善治九段VS郷田真隆九段でした。
決勝までの道のり
羽生九段は
- 1回戦:シード(タイトル保持者)
- 2回戦:高野四段
- 3回戦:菅井七段
- 準々決勝:豊島二冠
- 準決勝:丸山九段
郷田九段は
- 1回戦:シード(前年度ベスト4)
- 2回戦:阿部七段
- 3回戦:横山六段
- 準々決勝:広瀬竜王
- 準決勝:森内九段
両名とも準々決勝でタイトルホルダー、準決勝で同じ羽生世代の強豪を破っての決勝進出。
羽生九段は今年度の棋聖戦でタイトルを奪取された豊島二冠にリベンジを果たした格好。
郷田九段は今期竜王を奪取して文字通り昇り龍の勢いだった広瀬竜王相手に華麗に寄せ切った準々決勝が印象的でした。
両者のNHK杯成績
羽生九段
これも言わずと知れたという感じですが、羽生九段はNHK杯で10回優勝しており、唯一の名誉NHK杯選手権者ですね。
名誉NHK杯は10回優勝が条件。
トーナメント形式の一般棋戦を10回優勝という超難易度なので、今後誰も達成できないだろう大記録だといえます!!
…と言いたいところですが、今は藤井七段がいるので誰も破れない記録かは分かりませんね。藤井七段も名誉朝日杯の条件検討しなきゃいけないレベルで勝ってますし。
羽生九段の直近の優勝は2011年の第61回。
7年ぶりの優勝を目指すというのは別に珍しくも何ともないですが、羽生九段だと随分間が空いたなと思ってしまうあたり、我々将棋ファンも感覚が破壊されてます。
郷田九段
郷田九段はNHK杯優勝1回。
2013年の第63回で丸山九段を破って優勝しています。
決勝戦は今回で3回目。
長考派の印象ですが、一般棋戦で7回優勝経験があり早指しも苦にしていません。
決勝戦の感想
決勝戦の解説は佐藤康光九段、聞き手は藤田女流二段。
準々決勝と同じく決勝でも羽生世代だらけで、同窓会といわれるのも納得の状況(笑)
佐藤九段も『二人の印象は昔から変わらないですね~』などと感慨深げでしたが、そろそろ40代も終わりを迎えようとしているなか、決勝で同世代の二人が戦っているのは勇気づけられるでしょうね。
決勝戦は角換わりの将棋。
昨今将棋ファンならば親の顔より見るといわれる48金29飛車からの同型将棋にはならず、郷田九段が積極的に仕掛けていきましたが、羽生マジック炸裂!
佐藤九段も『分からない』『解説できない』と唸る妙手43歩を郷田九段が咎めることが出来ず、そのまま一気に押し切る形で羽生九段が11度目の栄冠をつかみました。
佐藤九段も解説で触れていましたが、羽生九段、郷田九段ともに得意型にこだわらず最先端の戦型を取り入れていくスタイルで、今回は羽生九段の角換わりへの最新研究が郷田九段を上回ったといえるかもしれません。
最後は素人目にも一方的になり77手という早い終局となりましたが、平成将棋界を牽引してきた羽生世代の2人が決勝で相まみえ、羽生九段が優勝したという平成の最後を締めくくるにふさわしい一局だったと思います。
また羽生九段は一般棋戦優勝回数を45回と伸ばし、大山康晴15世名人の44回を上回り歴代単独トップとなりました。
レーティングでもトップ5と差のない6位につけていますし、タイトル100期に向けて大きな弾みがついたと思います。
棋王戦について
渡辺二冠の7連覇がかかる棋王戦第4局。
渡辺二冠が2勝先取したものの、第3局では一時リード奪われた広瀬竜王が1勝を返し底力を見せたところ。
現在レーティングでも1位と2位ということで、まさに棋界最高峰も一戦といえます。
戦型
先手番の渡辺二冠の戦型選択に注目が集まりましたが、選んだのはやはりエース戦法の角換わり腰掛け銀。
ここのところ先手番、後手番問わず雁木を採用していることが多かったのでどちらを採用するかと思いましたが、一番自信のある戦型は角換わりということなんでしょう。
先日順位戦で斎藤王座相手にも最新型で快勝していましたし、明らかに用意の選択といった感じですね。
広瀬竜王があまり戦型に対して注文をつけたり、無理やり変化して力戦に持ち込むタイプでもないので、この辺り作戦家の渡辺二冠としては事前研究のしがいのあるところでしょう。
序盤
序盤は淡々と進み、親の顔よりよくみる48金29飛車からの同型将棋。
いや、この2年間ホントよく見ますねこの形。
振り飛車党の私も手順覚えちゃいましたよ。観る将の方も棋譜や動画見てる人は並べられそうですね。
互いに端歩の付き合い、後手番が玉を動かしながら手渡しをして先手番が攻めたところをカウンター!というのが近年角換わりの常識になりつつありますね。
プロ間ではまだ先手番有利な感のある角換わりですが、ソフト同士の自己対局や最新研究では後手番有利の見解が増えてきているとのこと。
渡辺二冠がどこで変化するか、どこまでが研究範囲なのか興味深いところです。
中盤
渡辺二冠が46に角を設置し積極的にリードを奪いに行った中盤戦。
桂交換や広瀬竜王の飛車先交換により局面はさっぱりとした形に。
素人目には角を手持ちにして飛車先が軽くなっている広瀬竜王がやれそうにも見えますが、ソフト的には100点ほど先手が良いとのこと…わからん(*_*)
ここから渡辺二冠が積極的に動いていきます。
24歩、同銀、65歩、31玉、64歩、同銀、65歩打、55銀、同銀、同角、33角打、同角成、同銀、35歩と火のついたような攻め。
受けてばかりもいられない広瀬竜王は66歩打、同銀、67歩打とと金作りに。
ここでがっちりと77銀打で受けた局面がこちら。
この局面でソフト的には渡辺二冠が300点ほどリードしているとのことですが、玉のわきが空いていて素人目には怖い形です。
ただ34歩の取り込みから36桂打が厳しそうですかね。
このまま先手ややリードを保ちつつ終盤へ。
終盤
終盤の入り口でこの局面。
大体先手600点くらいのプラスで優勢から有利になりかかっている局面でしょうか。
先手玉は危なそうに見えながら29の飛車が良く効いていて中々詰めろがかからない形。
対する後手陣は…パッと見全然攻め筋が見えないんですが、22歩や23歩が詰めろになっているみたいですね。
私のようななんちゃって有段者には棋譜コメが有難いです。
ここから79銀打、87玉、69角打、同飛、同と、89銀打、68銀不成、78金、28飛打、54銀、同金、63角打、85飛、86歩打、24飛成、85歩、42角打でこの局面
この角打ちで形勢が大きく渡辺二冠に傾きました。
ここまで600~1000点差をなんとかキープしていた広瀬竜王でしたが、ここで一気に2500点ほど差がつき敗勢へ。
感想戦でもこの一手を『一手バッタリでしたね』と悔やんでました。
かえて86歩、97玉位でまだまだ難解と言われてましたね。
ここからは41飛打、22玉、42飛成、同金、54角成、75桂打、同歩、85歩打、同玉、46飛打、56桂打、77銀打、同金、同銀不成、同玉、48飛成、44馬、同桂、同歩成、同金、24歩打、同龍と進んでこの局面
ここから豊富な持ち駒を活かして渡辺二冠が詰ましたのですが、実を言うと渡辺二冠この時点では明確な詰み筋が見えていなかったとのこと。
23手詰なんですが、一分将棋でしたし雰囲気詰むだろうということで、やってみたら意外と難しかったとのことでちょっと焦ったようですね。
詰まなかったら事件ですし。
ただ、結果は辛くも詰まし、これでタイトル計22期、棋王戦は7連覇となりました!
渡辺二冠と広瀬竜王は友人同士で、また渡辺二冠は感想戦・大盤解説の名手ということもあり、感想戦の様子も非常に面白かったのでニコ生のタイムシフトお勧めです。
渡辺二冠が率直に『(最後の詰将棋が)わかんなかったんだよね~』とぶっちゃけていて必見ですよ!
(手順は以下の通り、31銀、同玉、42銀、21玉、43角、32歩、22歩、同龍、31金、12玉、34角成まで)
感想
棋王戦はシリーズ通して名局が多かったですね。
さすが、将棋界最高峰の戦いといったところでしょうか。
特にこの第4局は手に汗握る熱戦でした。
名人戦第1局と並んで名局賞に挙げている方もチラホラいますね。
個人的には先週の火曜の宗桂イベントで渡辺二冠に『棋王戦応援してます。7連覇期待してます!』と言えたのがそのまま結果に反映されて嬉しかったです(^^)
これで、年度内のタイトル戦はすべて終了。
将棋大賞の最優秀棋士賞や優秀棋士賞、敢闘賞の行方も気になるところですが、それはまた別のブログで書きたいと思います。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました、コメントなど頂けましたら幸いです。
それでは次の記事でお会いしましょう!