こんにちは味噌人です。
前回は「将棋ってどんな人がやってるの?」というテーマについて紹介しました。
今回は「将棋のプロ棋士とはどういった存在なのか?」という視点から書いていきたいと思います。
Contents
プロ棋士とは?
将棋のプロ棋士とは一般的に公益社団法人日本将棋連盟(長いので、以下「将棋連盟」とします)に所属する四段以上の人間のことです。
単に「棋士」と呼ばれることが多く、「棋士」と書かれている場合は基本「女流棋士」や「アマチュアの将棋愛好家」ではなくプロ棋士を指します。
プロ棋士=棋士=将棋連盟に所属する四段以上の人
細かなことを言い出すと分かりにくくなるので、まずこの基本を抑えましょう!
こう書くと「四段ってなんか中途半端じゃない?」「○○女流三段って人がテレビに出てたけど、あの人はプロじゃないの?」という疑問が出てきたりするのですが、順を追って説明しましょう。
公益社団法人日本将棋連盟とは?
「プロ棋士とは?」という疑問を解決するためには、その所属する将棋連盟を説明する必要があります。
将棋連盟とは
『将棋の普及発展と技術向上を図り、我が国の文化の向上、伝承に資するとともに、将棋を通じて諸外国との交流親善を図り、もって伝統文化の向上発展に寄与すること』
~公益社団法人日本将棋連盟定款より引用~
を目的として活動する公益社団法人です。
正会員である
- 棋士
- 女流四段以上もしくはタイトル獲得経験のある女流棋士
と準会員、賛助会員、特別会員により運営されています。
ただ、役員の選出などの重要事項は正会員のみが参加できる『棋士総会』で決定されますし、外部理事を除いた会長、専務理事、常務理事という役職には伝統的に正会員が就任するので、実質的には棋士が自ら運営する形式をとっています。
このあたり基本的に引退した力士で運営する相撲協会に似てますね。
ただ一つ違うことは将棋連盟では引退した棋士ではなく現役棋士が役員になるパターンが圧倒的に多いということですね。
相撲でいえば相撲協会会長を白鵬がやるようななので、結構珍しい制度な気がします。
将棋は現役の期間が長く、特に役員になるほど実績のある棋士は60歳超えても引退していないことも多いので仕方ない所もあります。
- 将棋連盟は主に棋士が運営
- 会長などの役員は現役の棋士が多い
プロ棋士の仕事って何?
そもそも将棋のプロといいますが、どうやって生計をたてているのでしょうか?
対局による収益
棋士は名人戦を始めとする「8つのタイトル戦」や藤井君が連覇したことで一躍有名になった朝日杯のような「一般棋戦」に参加し、対局することで対局料や賞金を得て生活しています。
「将棋を指すだけでお金が貰えるの?」と疑問に思う方もいるかと思いますが、各タイトル戦や一般棋戦は新聞社を始めとするスポンサーが主催しており、多額の契約金を将棋連盟に支払っています。
皆さんも新聞の文化面に将棋の盤面が載っているのを見たことがあると思いますが、あれは新聞社が主催しているタイトル戦なども棋譜を載せることで、新聞の販売促進を狙っているわけです。…ただ、将棋がリアルタイムでタダで見れる時代にどれほど販促効果があるかは微妙なので、今では文化的な貢献という意味合いが大きいですかね。
また対局の様子を放送するAbemaTVやニコニコ動画等の動画サイトからの放映権料も入ってくるため、そういったお金が対局料の元手となり棋士に支払われているわけですね。
普及活動による収益
棋士にとっては普及も重要な仕事です。
これまでにも記事で触れてきた将棋イベントやメディアへの出演、アマチュア将棋大会のゲストや審判長、企業の将棋部や将棋教室での指導…etc、様々な普及活動をする対価として出演料や指導料を貰うというわけです。
棋士のお金の話は別記事で改めて書きますが、トップクラスでは年収が億に届くこともあり、なかなか夢のある世界です!!
棋士の仕事は
- タイトル戦や一般棋戦などでの対局
- イベント、メディアへの出演、指導などの普及活動
プロ棋士になるためには
奨励会ルート
棋士になるためのルートとして王道といえるのが将棋連盟が主催する「新進棋士奨励会」いわゆる「奨励会」を突破することです。
羽生九段や藤井聡太七段を始めとするトッププロは全員奨励会に在籍し、その中を勝ち上がることで実力を養い棋士となりました。
奨励会はアマチュア3、4段の実力があって初めて6級として入会できます。
そこから棋士になるための生き残りをかけた激しい戦いを潜り抜け3段まで上がって初めて、4段への昇段をかけて争われる3段リーグに参加できます。
年2回行われる3段リーグで2位以内(もしくは3位を2回)になることで初めて四段になり「プロ棋士」になれるのです。
ここでようやく冒頭の疑問が解決しましたね。
奨励会三段リーグを勝ち上がった人間、つまり四段になった人間のみ「棋士」になれるわけです。
ただし、奨励会に厳しい年齢制限があり、満23歳の誕生日までに初段、満26歳の誕生日までに四段に昇格できなければ強制退会となります。※ただし、ずっと勝ち越してれば30歳までは大会を引きのばせます
この辺りの人間ドラマは様々な小説や漫画の題材になっていて、名作もたくさんあるのでまたの機会に紹介したいと思います。
プロ編入制度ルート
奨励会を経由しないルートとしては、アマチュアからプロへの編入する「プロ編入制度」があります。
これはアマチュアが参加できるタイトル戦の予選や一般棋戦予選で棋士相手に10勝以上、勝率6割5分以上という規定を満たす好成績を収めたアマチュア棋士が、改めて編入試験で棋士相手に5局対局し、3勝できればプロ棋士に昇格できるという制度です。
この制度を利用してプロ入りした棋士に「瀬川五段」や「今泉四段」がいます。
瀬川五段のプロ入りまでの軌跡は「泣き虫しょったんの奇跡」として本や映画にもなってますね。
また今泉四段も非常にドラマティックな人生を歩んでいて、それを紹介するだけで記事が終わってしまうので、別の機会に記事にします。
棋士(四段)になるためには
- 奨励会三段リーグで2位以内もしくは3位を2回
- 編入試験で棋士相手に5局中3勝以上
まとめ
- 将棋連盟に所属する四段以上の人間
- 将棋連盟の正会員として運営にもかかわる
- 主な仕事は将棋の対局とイベントや指導などの普及活動
- プロ棋士になるためには奨励会を抜けるか編入試験を勝ち上がることが必要
こんな感じですね。
さて、プロの世界を語ると記事が長くなってしまうので、ここで一度分割したいと思います。
次の記事では、「女性棋士ってなに?」をテーマにを紹介していきたいと思います。
お読みいただきありがとうございました、コメントなど頂けましたら幸いです。
それでは次の記事『女性のプロ棋士はいるのか?~『女性棋士』と『女流棋士』の違い~』でお会いしましょう!