こんにちは味噌人です。
前回は「女性のプロ棋士とは?」というテーマについて紹介しました。
今回は「将棋の段位とは?」というテーマで書いていきたいと思います。
Contents
段位は何段まであるのか
ブログでも何回か触れてきましたが、将棋のプロ棋士とは
将棋連盟に所属する四段以上の人間
を指します。
つまり『四段』がスタートラインということですね。
では最高段位は何段かというと『九段』となります。
棋士は四段~九段のどれかの段位を持っていることになり、これはタイトルホルダーも一緒です。
昨年、羽生竜王が竜王位を失陥した際、羽生先生は何と呼ばれるのかということが話題となりましたが、結果現在の段位である羽生九段の呼称を用いることとなりました。
タイトルを持っている場合は段位よりもタイトル名が優先され『佐藤名人』『豊島二冠』『斎藤王座』などと呼ばれますが、これらのタイトルホルダーを段位に直すと
- 佐藤名人:九段
- 豊島二冠:八段
- 斎藤王座:七段
となります。こう書くと
という疑問がわくと思いますので、プロ棋士の段位がどう上がっていくのかを見てみたいと思います。
段位はどうすれば上がるのか ~昇段規定について~
プロ棋士の昇段にあたっては、6つの観点から基準が決められています。
- 公式戦の勝利数
- 全棋士参加の棋戦での優勝
- タイトル戦への挑戦
- タイトルの獲得
- 順位戦による昇段
- 竜王ランキング戦による昇段
それぞれ分かりにくいところもあると思うので、一つ一つ解説していきます。
公式戦の勝利数
これは一番わかりやすいですね。
例えば四段→五段への昇段は公式戦100勝という規定があるので、勝利数が規定数に達すればランクアップというわけで、単純明快です。
この昇段に必要な勝利数は『100→120→…』と増えていきますが、昇段するごとに一度リセットされます。
なので、四段で入ってきた新人が苦労の末に
『99勝したぞ!!後1勝で五段だ!』
という時に、他の昇段規定で五段に上がると五段としてまた一から六段への昇段に必要な勝利を積み重ねる必要があるわけです。
なお、将棋界において勝利数による昇段はファンから『あー、勝ち星規定で昇段かぁ…』という反応を貰うことがあったりします。
もちろん昇段は目出たい事なのですが、藤井聡太七段のように他の昇段規定でバンバン段位を上げてほしいというのがファン心理なのかもしれないですね。
全棋士参加の棋戦での優勝
これも単純明快な制度で、現在4つある全棋士参加棋戦で優勝すると昇段できるというものです。
全棋士参加棋戦というのは、タイトルホルダーVS挑戦者という構図の八大タイトル戦と異なり、テニスの4大大会のようにトーナメントで勝ち上がった者を優勝者とする仕組みで、昇段に関係するものとしては
- 朝日杯将棋オープン戦
- 銀河戦
- NHK杯戦
- 将棋日本シリーズ(通称:JT杯)
この4つが対象となります。
藤井聡太七段が『五段』の時に朝日杯将棋オープン戦に優勝し『六段』となったことは記憶に新しいですね。
なお、『新人王戦』『YAMADAチャレンジ杯』『加古川青流戦』は若手棋士を対象にしている棋戦のため勝っても昇段できません。
タイトル戦への挑戦
八大タイトル戦のうち『名人戦』を除く、
『竜王戦』『叡王戦』『王位戦』『王座戦』『棋王戦』『王将戦』『棋聖戦』の7つのうちどれかのタイトル戦の挑戦者となれば昇段することができます。
竜王戦は特別に挑戦するだけで『七段』に昇段できます。
その他は挑戦すると『四段』ならば『五段』、『五段』なら『六段』になれます。
名人戦は仕組みが特別なので後述の『順位戦による昇段』で記載します。
タイトルの獲得
八大タイトル戦のどれかに勝利し、タイトルを奪取することで昇段することができます。
それぞれタイトルの格により何段に上がれるかが異なり
名人位:1期獲得で九段
竜王位:1期獲得で八段、2期獲得で九段
その他:1期獲得で七段、2期獲得で八段、3期獲得で九段
となります。
『名人』と『竜王』という棋界最高峰の2大タイトルは別格という扱いにしているわけですね。
順位戦による昇段
『順位戦』とは名人挑戦者を決定するための予選で、ほかのタイトルとは異なり
A級、B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の5つの組からなり、名人への挑戦者となれる権利を持つのはA級在籍者のみです。
各組でリーグ戦形式で1年を通して対局していて、その成績により上位数名が上の組に上がり、下位数名が下の組に落ちるという仕組みです。
サッカーのリーグ戦のシステムに似ていますね。
順位戦では在籍する組によって昇段することができ
A級:八段
B級1組:七段
B級2組:六段
C級1組:五段
C級2組:四段
となっています。
『奨励会三段リーグを勝ち上がると四段に昇段できる』という仕組みがプロになっても続いていると考えると分かりやすいですね。
また他のタイトル戦では上で示したように挑戦者になることで昇段しますが、順位戦では組が上がった時点で段位に反映されるため、挑戦者になってもA級昇級時の八段から変わりません。
竜王ランキング戦による昇段
昇段規定の問題児、竜王ランキング戦による昇段ですが、結構細かく書き出すと下記のとおりとなります。
竜王挑戦:七段
竜王戦1組昇級:七段
六段昇段後竜王ランキング戦連続昇級または通算3回優勝:七段
竜王戦2組昇級:六段
五段昇段後竜王ランキング戦連続2回昇級または通算3回優勝:六段
竜王ランキング戦連続2回昇級または通算3回優勝:五段
うーん、相変わらず複雑です。
特に『ランキング戦連続昇級』『通算3回優勝』は竜王戦の仕組みを知っていないと理解が難しいので、またタイトル戦を解説する際に補足します。
昇段規定まとめ
これまでに記載した内容を段位毎にまとめると以下のとおりとなります。
九段 | 名人位1期獲得 竜王位2期獲得 タイトル3期獲得 八段昇段後に公式戦250勝 |
---|---|
八段 | 順位戦A級昇級 竜王位1期獲得 タイトル2期獲得 七段昇段後に公式戦190勝 |
七段 | 順位戦B級1組昇級 竜王挑戦 竜王戦1組昇級 六段昇段後に竜王ランキング戦連続昇級または通算3回優勝 タイトル1期獲得 六段昇段後に全棋士参加棋戦優勝 六段昇段後に公式戦150勝 |
六段 | 順位戦B級2組昇級 竜王戦2組昇級 五段昇段後に竜王ランキング戦連続2回昇級または通算3回優勝 五段昇段後にタイトル挑戦 五段昇段後に全棋士参加棋戦優勝 五段昇段後に公式戦120勝 |
五段 | 順位戦C級1組昇級 竜王ランキング戦連続2回昇級または通算3回優勝 タイトル挑戦 全棋士参加棋戦優勝 四段昇段後に公式戦100勝 |
四段 | 三段リーグの優勝・準優勝 三段リーグ次点2回 |
藤井聡太七段でわかる昇段の仕方
ここまで昇段規定を追ってきましたが、いまだに良く仕組みが分からないという方のために藤井聡太七段の昇段履歴と今後の最高の昇段スケジュールを書いてみます。
- 2012年9月:6級(奨励会に入会)
- 2015年10月:三段
- 2016年10月:四段(プロ入り)
- 2018年2月1日:五段(順位戦C級1組昇級)
- 2018年2月17日:六段(五段昇段後全棋士参加棋戦優勝@朝日杯)
- 2018年5月18日:七段(竜王ランキング戦連続昇級)
ここからは最速で昇段するにはという妄想です
- 2019年冬:八段(竜王位獲得)
- 2020年春:九段(竜王、王座、王将獲得によりタイトル三期)
藤井聡太七段は『順位戦による昇段』『全棋士参加棋戦優勝』『竜王ランキング戦連続昇級』と昇段理由がバラバラで説明にはうってつけですね。
なお、勝利数による昇段は段位が上がるごとに勝利数がリセットされますが、竜王ランキング戦連続昇級は段位が上がってもリセットされなかったり(藤井聡太七段は六段になってから1回しか竜王ランキング戦昇級してないですが、昨年度の昇級とあわせて連続昇級しているので六段→七段に昇段)、分かりづらいですね。
(…だいたい竜王戦のせいですが)
まとめ
- プロ棋士の段位は四段から九段まである
- 昇段には様々なルートがある
このようなところでしょうか。
段位に関しては書くことが多いので①、②という形で記事を分けたいと思いますので、本日はここまでとします。
最後までお読みいただきありがとうございました、コメントなど頂けましたら幸いです。
それでは次の記事『将棋の段位とは② ~段位別人数構成、段位と強さとの関係~』でお会いしましょう!