皆さんはいま最も強い棋士といえば誰が思い浮かびますか?
棋界最高峰のタイトルを有する佐藤名人や広瀬竜王でしょうか?
複数のタイトルを持つ豊島二冠や渡辺二冠を思い浮かべる人もいるでしょう。
タイトルを失ったとはいえ長年棋界の頂点に君臨した羽生九段や将棋界のニュースターとして驚異的な勝率を誇る藤井聡太七段の名が思い浮かぶ方もいるかもしれません。
およそ将棋界に限らず、プロの世界において最も人の興味を引く話題は、誰が一番強いか?であることは疑いのようないところでしょう。
今回はその『強さ』=『実力』にスポットライトを当て、将棋界において『実力』を示す指標の一つであるレーティングからタイトルホルダー、順位戦、竜王戦を分析していきたいと思います。
レーティングとは
将棋界におけるレーティングとは、過去の対局成績によって各棋士の実力を数値化したもので、非公式の指標です。
まず対戦前の相互のレーティングに基づいて勝利確率(期待勝率)を計算し、これと実際の対戦結果との差異に基づいてレーティングを更新する。これを試合のたびに繰り返すことで、いずれレーティングが各プレイヤーの真の勝利確率、すなわち強さを表す適正な値に収束するというわけである。
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』イロレーティング
数値に関しては、本ブログでは『将棋連盟 棋士別成績一覧』様のレーティングを引用させていただいております。
- 平均的な対局者のレートを1500とする
- 2001年4月時点で全員のレートを1500とする
- 新四段についても、レートは1500を初期値とする
というルールに基づいて計算されています。
詳細な情報は上記のリンクからサイトをご一読ください。
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レーティングから見るタイトルホルダー
それでは早速2018年度の各タイトル戦における両者のレーティングとその結果を下表にまとめます。
レーティングはタイトル戦第一局開始時のものです。
タイトル戦の勝者は青マーカーで示しています。
なおレーティング順位はタイトル戦開始月初の順位です。肩書・段位はタイトル戦開始時のものです。
タイトル | タイトルホルダー | 挑戦者 | レーティング順位 |
竜王戦 | 羽生善治竜王(1828) | 広瀬章人八段(1892) | 4位 vs 1位 |
名人戦 | 佐藤天彦名人(1783) | 羽生善治竜王(1853) | 11位 vs 3位 |
叡王戦 | 高見泰地六段(1722) | 金井恒太六段(1552) | 25位 vs 85位 |
王位戦 | 菅井竜也王位(1788) | 豊島将之八段(1898) | 10位 vs 1位 |
王座戦 | 中村太地王座(1730) | 斎藤慎太郎七段(1821) | 22位 vs 7位 |
棋王戦 | 渡辺明棋王(1894) | 広瀬章人竜王(1911) | 2位 vs 1位 |
王将戦 | 久保利明王将(1798) | 渡辺明棋王(1884) | 11位 vs 2位 |
棋聖戦 | 羽生善治棋聖(1820) | 豊島将之八段(1894) | 8位 vs 1位 |
こうして見ると、昨年度は8大タイトルのうちレーティング通りの結果となったものが6タイトルという結果となりました。
タイトル戦の挑戦者は厳しい予選を勝ち抜いた事もあり、叡王戦を除きレーティングが1桁です。
タイトル挑戦のためにはレーティングが1桁であることが一つの目安となりそうですね。
レーティングから見る順位戦
順位戦の各組の平均レーティングを表にまとめてみました。
なお、こちらのレーティングは記事を作成した2019年4月21日現在のものです。
平均 | 中央値 | 上位5名平均 | 下位5名平均 | |
名人・A級 | 1816 | 1795 | 1873 | 1763 |
B級1組 | 1750 | 1750 | 1832 | 1676 |
B級2組 | 1606 | 1601 | 1730 | 1493 |
C級1組 | 1568 | 1554 | 1744 | 1408 |
C級2組 | 1544 | 1537 | 1741 | 1373 |
この表から読み取れることとして
- 各級・組の平均レーティングはA級からC級2組まで階段上になっている
- B級2組以下は降級点累積での降級となるため、平均レーティングの差が小さくなる
- B級2組以下は下位5名平均がどのクラスの中央値にも達しない
- C級であっても上位5名の実力があればB級1組で十分に戦える実力を有する
このような感じでしょうか。
上位2名昇級、下位2名降級とすぐに級が入れ替わるA級とB級1組は高いレベルを維持していますが、B級2組以降は停滞・渋滞の感が強いですね。
適性なラインの見極めは難しいですが、レーティングのねじれ現象が解消されるよう、昇級枠の拡大、降級点の枠の拡大が望まれます。
レーティングから見る竜王戦
竜王戦の各組の平均レーティングを表にまとめてみました。
なお、こちらのレーティングは記事を作成した2019年4月21日現在のものです。
平均 | 中央値 | 上位5名平均 | 下位5名平均 | |
竜王・1組 | 1786 | 1770 | 1896 | 1703 |
2組 | 1659 | 1655 | 1757 | 1562 |
3組 | 1635 | 1629 | 1733 | 1533 |
4組 | 1584 | 1567 | 1798 | 1427 |
5組 | 1524 | 1514 | 1710 | 1363 |
6組 | 1440 | 1428 | 1644 | 1268 |
この表から読み取れることとして
- 各組の平均レーティングは1組から6組まで一応階段上になっている
- 1組と2組以下のレーティング差が激しい
- 3組~6組の上位5名は2組で十分優勝を狙える実力を有している
- 4組の上位5名平均が竜王・1組の平均レーティングを超えるなどねじれ減少が大きい
こちらでも1組の実力は圧倒的ですが、2組以下ではかなりねじれ減少が見られます。
特に若手実力者が集中している4組での優勝は2組以上の難易度となっています。
昇級・降級枠が大きい竜王戦でも全くねじれ減少が是正されていないところを見ると、完全に実力を反映したシステムというのはかえって恣意的で不自然なものであるともいえそうです。
特に竜王戦は賞金も高く総当たりでもないため一戦の重みが大きいという特性から、ここ一番のとっておきの作戦や勝負強さにより上位の組をキープする勝負術を発揮しやすいのかもしれませんね。
現状のレーティングと組の相関関係を見ると、昇級枠・降級枠が大きいことが必ずしもベテラン不利、若手有利にならないことが分かり、面白い結果です。
まとめ
ここまで見てきたレーティングとタイトル戦、順位戦、竜王戦の関係性をまとめると
- タイトル戦でもレーティングが高い側が有利な傾向がみられる
- タイトル戦挑戦者となるためにはレーティング1桁が一つの目安となる
- 順位戦・竜王戦ともにトップカテゴリーの実力は圧倒的
- 順位戦・竜王戦ともに上位カテゴリーの中央値よりも下位カテゴリーの上位5名レーティングの方が高いというねじれ減少が生じている
- ねじれ減少の発生は昇級枠・降級枠の問題だけでなく、棋戦の仕組み全体で関わってくる。(総当たりの順位戦で昇級枠・降級枠の大幅な拡大を行えばかなり是正される?)
このような所でしょうか。
個人的にはレーティング上位によるトーナメント棋戦が見てみたいのですが、そのためにはレーティングが公式の指標となることが先ですね。
私も勉強不足でまだレーティングの事をしっかり理解できていない部分も大きいので、これからも定期的に記事にすることで理解を深めていきたいと思います。
次回もレーティングに関わる小ネタをご紹介したいと思いますので、是非ご覧ください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
コメントなど頂けましたら幸いです。
それでは次の記事『【将棋界で一番モテるのは誰だ!?】彼氏にしたい棋士2017』でお会いしましょう!