こんにちは味噌人です。
前回は「将棋のプロ棋士とは?」というテーマについて紹介しました。
今回は「女性のプロ棋士とは?」という視点から書いていきたいと思います。
Contents
女性のプロ棋士はいるのか?
結論から書きます。
残念ながら将棋の歴史において、過去にも現在にも
「女性棋士」はいません!!
こう結論だけ書いてしまうと
「え、でも女流名人とか女流〇段って聞いたことあるけど、あれは何?」
と思われた方もいるかと思います。
この辺りは言葉の定義が難しいところなので、前回の記事のおさらいも含めて、棋士とは何なのか、何故女性棋士はいないのかを見ていきましょう。
棋士の定義
前回のおさらいになりますが、将棋のプロ棋士とは一般的に
将棋連盟に所属する四段以上の人間
を指します。
この記事においてもこの定義を用います。
女性棋士になるためには?
そもそも棋士になるための登竜門「奨励会」においては男女の区別は一切なく、奨励会の昇段規定を満たして四段に昇段することのみが棋士となる条件です。
男性も女性も平等に同じ条件で戦い、勝ち上がった人間だけが強い者だけが棋士になれる、完全な実力の世界といえます。
しかし、将棋は競技人口男女差の影響もあってこれまで女性で四段になった人間はおらず、プロ棋士になるための最終関門といえる、三段リーグまで辿り着いた人間も二人しかいません。
- 里美香奈 女流四冠=奨励会を年齢制限で退会
- 西山朋佳 女王=奨励会三段リーグ在籍中
の2名です。
特に里美香奈女流四冠は7つある女流タイトルの内4つを保持する圧倒的な実力を持ちながら、とうとう三段リーグを勝ち上がることが出来ず年齢制限により退会となってしまいました。
いくら実力社会とは言っても、このような状況では、
将棋界は完全な男社会となってしまいます。
将棋連盟が単なるプロの興行会社だったらそれでも良いかもしれないのですが、将棋連盟には日本の伝統文化である将棋普及の使命があり、そのためには女性への普及が不可欠です。
そこで、出来たのが女流棋士という制度です。
女流棋士制度の歴史
女流棋士の第一号は『蛸島彰子女流六段』で、1967年に女流棋士になったと言われています。
言われています、というのも当時はまだ現在のような女流棋士の制度もタイトル戦もなく、『レッスンプロ』として活動していたためです。
1974年に最初の女流棋戦として女流名人位戦が創設され、1974年10月に蛸島彰子女流六段を含む6名が制度上の初の女流棋士となりました。
以後、少しづつ女流棋士や女流棋戦の数を増やしながら、現在の女流棋士の制度が出来たというわけです。
女流棋士は何人いる?
現役の女流棋士は2019年3月1日現在で
- 将棋連盟在籍:57名
- LPSA在籍:8名
- フリー:1名
となっています。
LPSAというのは将棋連盟から分かれた女流棋士のみの団体なのですが、書くととても長くなるため割愛します(…いつか取りあげます)
女流棋士になるためには
女流棋士はこのような流れの中できた制度であるため、当然女性のみがなることが出来ます。
女流棋士になるためには以下の条件があり、
- 研修会(将棋連盟が開催する奨励会の下部組織的な機関)で通算48局以上対局した上で、B2クラス以上に在籍する
- アマチュア出場枠のある公式棋戦で所定の成績をおさめる(例:マイナビ女子オープンで本戦ベスト8進出以上)
- 奨励会を2級以上で退会する
①~③のどれか一つでもクリアすれば、女流2級として女流棋士になることが出来ます。
奨励会2級でも即女流棋士になれるなどかなり条件を緩和することで女流棋士を育成し、女性への将棋の普及、ひいては女性棋士誕生に繋げていきたいというのが女流棋士制度の目的といえます。
女流棋士の仕事とは?
女流棋士の仕事も基本的には棋士と違いはありません。
対局
2019年から開催される優勝賞金700万円の『ヒューリック杯清麗戦』を頂点とした7つのタイトル戦や公式・非公式の一般棋戦といった女流公式戦に参加し、対局します。
ただ、棋士と比べ対局数は少なく、中々勝ち上がれない女流棋士は年間10局程度しか対局できないなど、対局だけで十分な収入を得るのは難しいのが現状です。
普及
女流棋士の仕事としては普及活動の方が目立ちがちですが、メディア出演やイベント出演、指導対局、講座、解説会やネット媒体での対局の聞き手、将棋教室、記録係などが主なものとなります。
特にAbemaTVやニコニコ動画、また各地で行われる解説会では基本的に
『棋士が解説』『女流棋士が聞き手』
という構図が多く、女流棋士は棋士と比べ人数も少ないため、人気の女流棋士は聞き手やイベントのゲストとして各地を飛び回るほど多忙な日々を送っています。
追記:女流棋士、女性奨励会員の棋戦参加について
【追記@2019年8月7日】
本日将棋連盟より以下のプレスリリースがありました。
この度、日本将棋連盟は女流棋士がプロ棋士編入試験に合格した場合、また女性奨励会員が四段の資格を得た場合の規定を下記の通り決定いたしました。
1.女流棋士がプロ棋士編入試験に合格した場合、女流棋戦、及びプロ棋士公式棋戦の両方に出場することが出来る。
2.奨励会に所属している女性が四段に昇段をした場合、女流棋士申請を行うことが出来る。ただし、申請期間は昇段日から2週間以内とする
里見女流5冠や西山女王により女性棋士誕生の可能性が大きくなった今、迅速かつ適切な対応で素晴らしいですね!!
これまではこの辺りの扱いが明確で無かったため『女流タイトルホルダーがプロ棋士になった場合、タイトル返上となるのか?』という問題がありましたが、晴れて女流タイトルを保持しながらプロ棋士として棋戦に参加できる事が明文化されました。
これで女流タイトルへの責任感からプロ棋士転向を諦めるケースも少なくなりますし、女性棋士誕生に向けて制度が整いましたね。
まとめ
- 棋士になるのに男女の区別はない
- 奨励会を突破して『女性棋士』になった人はいない
- 『女流棋士』は女性への将棋普及のための制度で条件が緩い
- 『女流棋士』の仕事内容は棋士とほぼ同じ
- 女流棋戦に参加しながらプロ棋士としての棋戦参加も可能に
このようなところでしょうか?
現在は女流棋士の普及活動のおかげで将棋をする女性も増えていますし、将棋ソフトによりいつでもどこでも将棋を研究することが出来るようになっていて、以前ほど男女による有利不利がないのではといわれています。
いつか、『女性棋士』の誕生を見てみたいですね。
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最後までお読みいただきありがとうございました、コメントなど頂けましたら幸いです。
それでは次の記事『将棋の段位とは① ~昇段の条件、藤井聡太七段の例~』でお会いしましょう!